【エッセイ】深層のことほぎに耳をすませる
末広町の駅で電車を降り、階段を登った。
地上に出ると街は歩行者天国で、多くの人が道路に溢れていた。
AKB48発祥の地。最近話題になっている48グループがここから始まった。
外国人観光客が多かった。みんなアニメの袋を両手に持って嬉しそうだ。
歩行者天国の真ん中で写真を撮っている。10年前にここでは通り魔事件が起きた。
用事を済ませ、外に出るとあたりは暗くなっていた。
歩行者天国は終わり、歩行者は歩道に集まる。
たこ焼き屋に並ぶ外国人たち、床に散らばったゴミ。
その中で客引きをするメイド喫茶の女性たち。
そしてピカチュウの衣装を着て客引きするフクロウカフェの店員。
ふくろうより目立っている。
やすいSDカード、中古のギター。パソコンに部品。
セクシーな二次元ポスターの前で楽しそうに語る大人たち。
ゲームの袋とアニメの袋を持っている観光客。
自分がどこにいるのかわからなくなった。
秋葉原の歴史
歴史を振り返ると戦後すぐに、この場所は電気街になった。
アーケード下に多くの人が集まり、賑わった。
その後音楽ブームでCDSショップや楽器屋が増える。ハードオフはその名残か。
ゲームブームから始まり、パソコンゲームのもととなったアニメ商品を扱うようになる。
2005年に「オタクブーム」が話題になり、つくばエクスプレスが開通し、AKB48が誕生した。新しい文化、アクセス、さまざまなムーブメントが巻きおこった次の年、2008年。事件が起こった。
秋葉原の名前の由来
秋葉原の名前の由来が気になったので調べてみた。
江戸時代には火事が多かった。木製の家だったら大変だったろう。
静岡の方からわざわざ秋葉大権現様という火除けの神様をお迎えして祀ったのが始まりらしい。
歴史を振り返ってみると、自分が今どこに立っているのかがわかる。
土地に根ざす記憶。
それを引き受けてどのように未来に繋げばいいのだろうか。
コンクリートに大地を覆われ、高層ビルに空を覆われた僕らは、その下に眠る繊細なことほぎに耳を澄ませる。