ドリップコーヒーを淹れる:朝【エッセイ】
朝6時に目が覚める。
眠気で目が開かないまま、水をポットに入れて火にかける。
昨日は雪が降ったからだろう。ひんやりとした冷気が部屋に沁み込んでくる。
ポットから湯気が立ち上ると火を止める。
コーヒーの粉をドリッパーに入れる。
いつかはコーヒー豆を買って、コーヒーミルを購入してみたいとも思う。
少しだけお湯の温度が下がった頃に、お湯を注ぐ。
最初は、蒸らす時間なので少し待つ。
最初の一滴が落ちてくるのを待っているときがもっとも落ち着く時間だ。
なにかを待つ、ということに不慣れになってきた私に、ほんの少しの忍耐を与えてくれる。
ポタリ
と最初の一滴が落ちる。
すると次から次へと
ポタっ。ぽたっ。
コーヒーが下に落ちていく。
この音を聴くと、たまに禅庭を思い出す。
苔むす京都のお寺。雨上がりに水滴が垂れる音。
それに近い。
コーヒーと仏教が近いと思うなんて不思議だ。
コーヒーをドリップで淹れるのはとても難しい。
私のお気に入りのカフェがある。
この前初めてカウンター席でコーヒーを飲んだ。
オーナーがドリップコーヒーをいれているのを目の前で見たが、お湯を注ぐと真ん中から
ブワっ
と泡が出る。
あんなに泡が出るものかと思うくらいぶくぶくと出ていた。
いつかあんな風にコーヒーを淹れられるだろうか。
彼ほどとはいかなくても、朝、静かな時間にコーヒーを淹れるのは至福の喜びだ。
1日が静かに始まっていくのを感じる。